2015年7月30日木曜日

ワールドグランプリを振り返って

今年のワールドグランプリの結果は、優勝がアメリカ、2位ロシア、3位ブラジル、4位中国、5位イタリア、そして6位日本。予選全勝の中国がベストメンバーを決勝ラウンドに送り込まなかったこともあり、アメリカの圧勝的強さが印象に残る大会だった。

中国と並び現在のアメリカは間違いなく世界から頭ひとつ抜けている。特にロースターの厚さでは世界一ではないだろうか。登録されているすべてのプレイヤーを大会を通してバランスよく起用し、どの選手がコートに入っても力の差が出ない総合的強さを見せた。加えて、同時にトロントで行われていたパンアメリカンの大会では、全く別のチームで、
ベストメンバーで挑んだドミニカ共和国やフェグレイ選手やジャクリン選手を含むブラジルを押さえ優勝している。決勝の模様を映像で見たが、早い攻撃を軸にしたバレーは、グランプリで優勝したチームとさほど違いは感じられなかった。おそらくアメリカ代表チームのプログラムが、一貫されたシステムによって連ねかれ、チーム全体が向上している結果の表れだと思う。どの選手が入ってもなかなか思うようなバレーができなかった今回の日本チームとは対照的だ。また大会中興味深かったのは、タイムアウト時のベンチの様子。その時のローテーションで前衛ブロックの中心になるセンターの選手が、相手の攻撃への対処を監督に代わりチームに再確認する場面が多く見られた。ただベンチからの支持を受けて動くのではなく、コートに入る選手が自主的にどういう戦い方をしているのかを考えしっかり理解し確認している様子が印象的だった。今のアメリカはチーム全体、各選手レベルでどういうバレーをやっていくのかというコンセンサスがしっかりとれているのだと思う。

そのアメリカを予選で倒した優勝候補中国は、決勝ラウンドを控え選手にまかせ、ワールドカップに焦点を絞ったようだ。昨年よりさらに強さを増し、近年最も成長を遂げているチームだと思う。若手の台頭により、荒さの目立つバレーの印象が強かった数年前とは見違えるほど、いろんな部分で修正が行われている。特にこの大会ではレセプション、そしてサーヴ力のアップが印象的だった。アメリカほどのスピードは無いが、パワーと高さを生かしたバレーではおそらく上。加えてシステムが乱れても、2段トスを打ち切れるエースの存在が大きい。ワールドカップでも間違いなくアメリカと並び優勝候補となるチームだ。

若手中心のチームで挑んだブラジルはアメリカ、ロシアに負けわしたものの、さすがにしっかりメダルを獲得。中国、アメリカに比べると世代交代に苦しんでいる感はあるものの、トップチームの実力を見せた。ワールドカップへの参加がないため、今季はチームの中心であるベテラン勢をゆっくり休ませ、ベストなコンディションで来年のオリンピックにかけてくるのであろう。

そして日本。昨年の世界選手権にもまさり、チームにとっては非常に厳しい大会だったのではないだろうか。もともと日本は、過去いろんな選手や戦法を試し、シーズンのコンディションを見極め、同時に他のチームのデータを集めるような場にこの大会を置いていたように思うが、決勝ラウンドで他のチームとここまでレベルの違いを見せつけられたことは近年珍しい。思うに、日本がハイブリッド6という新しくも困難な取り組みを行っている間に、他のトップチームでは個々の選手の技術を向上させ、チームとして目指すバレーのレベルアップに成功しているのではないだろうか。逆に日本はオールラウンドであるということにプライオリティを置いたため、本来極められるべきポジションのスキルの向上があまり出来ていないように感じる。結果決め手に欠けてしまい、どの試合も、またどの選手が出ても中途半端で、チームがいったいどんなバレーを目指しているのか、見ている側にはあまり伝わってこなかった。特に日本のバレーの要となるべきセッターやリベロポジションは、数字に表れている通り、海外のチームから逆に遅れを取り始めてしまっている。古賀選手や宮部選手のような明るい要素もあるが、来年のオリンピックで勝つためには彼女らに頼るようなバレーをしていては厳しい。前回銅メダルをとった功績は素晴らしいし、もちろん新鍋選手や江畑選手が今回参加していないこともあるが、今の日本チームはあの時のレベルではなくなってしまっている。そんな状況でトップチームに勝てるほど世界は甘くないということをこの大会で痛感出来たのではないだろうか。 ワールドカップまではもう時間も無いので、修正は難しいと思われるが、是非今回の悔しさを来年につなげていってもらいたい。 頑張れニッポン!

以下個人賞


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